「いきもの」「たべもの」と繋がるものづくり
人口減少時代に突入し、これまで急速に宅地化されてきた日本の都市空間を再び農地化すべく、2016年に「都市農業振興基本計画」が策定されました。今後、都市農地は「宅地化されるもの」から、「都市にあるべきもの」と位置づけなおされていくことになります。
都市に再び農地が上書きされてくると、私たちは多くの「いきもの」「たべもの」を、これまでよりも身近に感じることになるはずです。「地産地消」の流れも受け、農や食をめぐる新しい動きは、ポートランド、コペンハーゲン、アムステルダムなどの海外の都市でもすでに盛んになっています。
しかし都市農業という営みにおいて「土地や場所の固有性」を無視することはできません。日本には日本の気候があり、また特有の都市空間、居住空間があります。固有のライフスタイルとワークスタイルも存在します。
日本に合った、新しい都市農業を展開するためには、適合した品種や作物の選定、畑や生態系のメンテナンス方法、それらを支える道具やサービス、組織やライフスタイルが必要になるでしょう。
「つくる」を支えるツール:FAB
わたしたちは、建築やプロダクトなどの「もの」をつくる研究室です。
「その土地や場所に固有なものをつくる」には、どうすれば良いでしょうか?
今までであれば、どの場所でも必要とされる平均的なものを、工場で大量に効率的につくり、それをあらゆる地域に広く輸送して普及させることが当たり前でした。しかしそのやりかたでは、「土地や場所の固有性」に根差したものは生まれません。
大量生産
地産地消
これからは、その土地でつかうものを、その土地の材料をつかって、その土地でつくることが鍵になってきます。そのためのツールとして、3D プリンタなどのデジタル工作機械を用いたものづくり = 「デジタルファブリケーション」 が急速に広がっています。
ものが使われるまさにその現場で、必要なものを必要な量だけ生産でき、そしてそのアイディアをオープンソースとして流通させることもできるデジタルファブリケーションは、ものづくりのためのアイディアを実現し、展開するための、強力なツールになっています。
農業の視点をものづくりに逆輸入する
「いきもの」や「たべもの」のような有機物は、常につくられては消え、地球上を循環しています。同じように、3Dプリンタをはじめとするデジタル工作機械でつくられるものも、単につくられるだけでなく、その後の消化や分解、廃棄までのプロセスを考慮したものでなければならないでしょう。
私たちは、材料のリサイクルから、生分解性プラスチックの応用、土や木などの自然素材の活用まで、広く「マテリアル・フロー」に着目し、親環境的なファブリケーション技術を開拓しています。
既存の材料をリサイクルしてレーザーカッターのシート材にかえる
ポリエチレンのごみ袋からシート材 | 牛乳パックからシート材 |
コミュニティの視点
また、地産地消のコンセプトを実現し、持続するためにもっとも重要なのがコミュニティの視点です。
昨今、3Dプリンタやレーザーカッターを備えた市民工房であるFabLab、都市でコミュニティ農園を営むNPOなど、 「地産地消」の視点をもった異なるコミュニティが立ち上がりつつあります。それらをいかに有機的に連携するかが鍵になると私たちは考えています。
Urban Farming x Fabの目指すこと
「日本らしい都市農業のあたらしい産業と文化」を促進するために、
「デジタルファブリケーションによる自由なものづくり」を掛け合わせることがその一助になるに違いない。
この仮説をもって、さまざまなモノのデザインを通じて
それぞれの土地や場所に根差した新しいスタイルを開拓することが、私たちのミッションです。
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