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御挨拶
―第1期研究室(2005-2009)から第2期研究室(2011-)への移行に関して―

慶應義塾大学・環境情報学部・田中浩也研究室(第1期)は2005年春にスタートしました。

昨今ではバイオミミクリ/バイオインスパイアードデザインと呼ばれるようになった「自然に学ぶ」ものづくりを実践すること、同時にデザインとエンジニアリングを融合した新しいジャンルを開拓することを設立の目標とし、学生の自由な想像力を重視した活動を続けました。研究会から生まれたアウトプットは、日本グッドデザイン賞新領域部門(植物インターフェイスと栽培メディア)、アルスエレクトロニカ常設展(Ene-GeoMetrix)、JWDA/WEBデザインアワード・ニューフェイス部門での2年連続受賞(Weather Transporter, Skylight)、WISSデモ発表賞(Oto-Shigure)、Mdc Award プロダクト&ファンシー雑貨コース佳作(Animatin’ Living)をはじめとして、特許申請、国際学会発表、展覧会、ワークショップと輝かしい成果を生み出すことができました。そうした活動の集大成として、東京・光明寺で2008年に「Nature and Beyond」と題した展覧会を催しました。

そうした研究活動と並行して、脇田玲准教授中西泰人准教授藤田修平講師らと一緒に学部の「デザイン言語」系科目群の再構築を行うなど、教育カリキュラム整備にも尽力してきました。2008年からは新たな教員メンバーを迎えて大学院プログラム「エクス・デザイン(X-Design)」をスタートし、デザイン・エンジニアリングを推進する日本における唯一無二の教育・研究拠点として挑戦を続けています。

そのような過程を経て、田中浩也研究室(第1期)は当初の目標をほぼ達したと考えるに至り、2009年をもって学部の研究会を一旦解散することとなりました。現在は、2011年4月より新たに始動する田中浩也研究室(第2期)の準備のため、マサチューセッツ工科大学(MIT)建築学科にて滞在研究を行い思考と技術のリブート作業を行っています。また何名かの大学院生は引き続き、第2期の活動の基盤となるようなスタートアップ研究を行ってくれています。

さて私自身は、かつてより、建築的/メディアアート的アイディアを用いて、都市(や田舎)のパブリックスペースに介入するデザインに強い関心を寄せてきました。田中浩也研究室(第1期)の最初のプロジェクトとして行った「函館モバイルバープロジェクト」をはじめ、久原真人との双頭ユニット“tEnt”での実践において、新しい技術を上手く使いこなしながらも、地域社会にコミットするデザインの方法論を模索してきました。また、ウェブ上での「オープンソース」活動には、現実世界の公共性とはまた異なる「つくることを通じた、人と人とのつながり・連鎖」という、国境を越えた新しい協働性・共同性の萌芽があると考え関心を抱き続けてきました。

・地域社会にコミットしつつ技術のイノベーションを達成すること。
(もしくは先端技術を周縁世界に移転すること。)
・ウェブ上での「オープンソース」デザイン運動を促進し活動範囲を
国際的に拡げ「つくることの連鎖」を加速させること。
・建築的アイディアとメディアアート的アイディアのさらなる高次融合を実現すること。

そのような目的によりフォーカスし、実践に移すため、田中浩也研究室(第2期)は「ファブラボ・ジャパン」と連携し、より対外的に開かれた活動体制へとシフトしたいと思います。社会活動としては他団体と連携したワークショップを繰り返しつつ、研究活動としては「フィジカル・デザイン」を刷新する鍵となる4つの要素技術―コンピュテーショナルデザイン、デジタルファブリケーション、オープンソース、ワールドワイドロジスティクスを重点的に扱いつつ、最終的には「プログラムできる離散的物質(Programmable Matter)」を生み出したいと思っています(詳しくは10+1スクールの連載を参照

私が今後10年(2010年~2020年)に重要だと考えている研究アジェンダは、「いきるためのメディア」の第1章に執筆しました。これは高校生向けに平易な言葉で書かれています。

田中研で身につけることのできるスキルは「デザインエンジニア」という新しい職能の提案へとつながっていきます。この職能が持つ将来像は「1995年以後~次世代建築家の語る建築」に藤村龍至さんとの対談として収録されています(建築分野からアクセスしてこられた方はこの書籍を読んでいただければ、新しい職能を提案しようという私のスタンスを理解していただけると思います)。

最後に、現在参画している「ファブラボ」の国際的活動は、ニール・ガーシェンフェルド著「ものづくり革命―パーソナル・ファブリケーションの夜明け―」に克明に記述されていますので、まずはこの書籍をチェックしいていただけたらと思います。

田中浩也研では2011年からの研究室メンバーを、学部生・大学院生問わず大募集中です。
そして、「ファブラボ・ジャパン」では、慶應義塾大学SFC学生に限らず、活動に参加いただけるあらゆる方を募集中です。
関心のある方はいつでも htanaka (at) sfc.keio.ac.jpにメールをいただければ、遠隔でも相談に乗ることができます。できれば上記3冊をあらかじめ読んでおいていただけると、初回から話が噛み合うものと思います。これからの研究活動・社会活動の中で、沢山の意欲ある方々と出会えることを楽しみにしています。

田中 浩也
雨のボストンにて
2010年8月25日

博士(工学)
慶應義塾大学環境情報学部准教授
マサチューセッツ工科大学建築学科客員研究員
国際メディア研究財団客員研究員
FabLabJapanメンバー/Fab Associatesメンバー

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研究室のものづくり環境
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旧・作業室/新・図書室
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旧・作業室/新・ファブラボベータ
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